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| 波おだやかに風絶へて 立つ霧くらき玄海の 波路遥かにさしかゝる 我運送の常陸丸 乗員七百有餘名 皆これ干城貔貅の士 敵と雌雄を決せんと 勇氣たれかは劣るべき 俄に轟く砲聲は 只事ならずと聞く内に 敵艦忽ちあらはれて 打出す弾丸は雨あられ 降れと敵は勸むれど 我には建べき白旗なし 死すとも引かず退かぬ 日本男兒を知らざるか 弾丸われに命中し 機關は砕け火は起こり 流るゝ血潮と諸共に 屍は算を亂したり 腰に劍を帶れども 手に手に銃は握れども 船その船にあらざざれは 戰われぬが口惜や 今は是まで死すべしと 決して騒がぬ須知中佐 捨る命は輕けれど 聯隊長の任重し 残して敵に渡さじと 手ずから火に焼聯隊旗 焔は煙と消ゆれども 赤誠いかて消へ失せん 數萬の敵を取りひしぐ 勇も施す處なく 運命船と共にして 殉せし六百餘名の士 沈みし屍も歸らねど 壮烈鬼神を泣かしめし 最後は日本軍人の 鑑とあらん千代かけて |