勇敢なる水兵

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日清戦役

定遠は未だ沈みませんか

斯る激戦猛闘の中にありて、旗艦松島艦上に於いて身に十餘箇所の傷を被り、面部一體に火傷して気息奄々たる一水兵は同艦の副長向山少佐の姿を見るや「副長殿」と呼び、苦しき聲をあげて「定遠はまだ沈みませんか」と問ひしに、向山副長は「心配するな、定遠は最早発砲の出来ないまでにやつ付けたから、是れからは鎭遠をやるのだ」と答へると、彼の水兵は微笑して「どうか仇を打つて下さい」との一言を最後として其まま息を引きとつた。奮戦激闘に生死の境を超越し、今や息の絶えなんとする寸前までも捷戦の念に燃え、勝敗の如何を氣遺ひたる水兵の勇敢さには、向山副長の胸中は張り裂くばかりに苦しかつたと、後に同副長は語つたと云ふ。

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