アルビエの聖母

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フィレンツェ ウフィツィ美術館
1517年
アンドレア・デル・サルト

「アルビエの聖母」は、アンドレア・デル・サルトの代表作品として知られている。デル・サルトはそれを描いて、間もなくフランスに旅立ったが、その柔軟な表現はすでに完成をあらわしていた。その様式は近代化されていて、十五世紀のフィレンツェの傅統的な様式はその跡形も見出せない。デル・サルトの作品は優美な感情をともなったとはいえ、それはあくまで冷静であつて、ヴェネツィア畫派の情熱的な制作とは對蹠的な性質をなすものであつた。デル・サルトは嚴かな静けさを生むために、ことさらに聖母をはじめとして、十字架をとつて立ち並ぶ聖フランチェスコや聖ヨハネの像までも、彫像のように描寫した。その中では微笑みながら母にとりすがる幼兒キリストが、現實的な愛らしさで、この冷静な雰圍氣に一つの迎揚を加えている。アルビエの名は、古代の神話にあらわれる顔が女で體が鳥の怪物アルピアが、聖母のいます臺座の四隅に二羽ずつ浮彫彫刻として描かれているところから附けられたものである。生ける彫像として臺座に立た聖母の姿は、聖母というよりも、むしろフィレンツェの貴婦人である。その顔には、デル・サルトがくりかえして描いた彼の愛妻ルクレツィア・デル・フェーデの面影がしのばれる。聖母の裳によりすがる天使の姿の愛らしさまで、それは優美な感興ではあるが、しかしルネサンスの後期では、初期の宗教畫にみられたような、森嚴な思索の裏づけからくる信仰の鋭さは見られない。とはいえこの作品は、端正な静けさにまもられていて、デル・サルトが好んで用いたモニュメンタルな構成や、その織細な均衡が美しい調和をあらわした典型的な作品というべきであろう。

アルビエの聖母

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