大津村鹿兒神社拝殿

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第三章武家美術時代

第二節建築

二、神社建築

拜殿幣殿の現存せるものは北面し天保三年に起工し天保六年乙未年三月に落成した、大工は同村北 浦なる名匠坂本新三郞であつた。柿葺の切妻造にて棟は銅板葺にて、棟飾の鬼板には三柏葉の絞を彫刻し桁行四間、梁間ニ間にて東西に長い楝の中央に面せる千鳥破風を附け、その下部には軒唐破嵐の向拜をつけその桁行はニ間奥行は半間となつてゐる、屋根裏は一重の疎垂木にて柱頭は三つ斗 にて木鼻がつけてある、上部の千鳥破風は優美にして懸魚がありその內下方には大瓶束も善美にて 結綿を刻し虹梁の上に立つてゐてその下部には大斗があり木鼻を以て裝飾してある、向拜の部分は唐破風が優美で懸魚は雲形を彫出し屋根裏は化粧屋根裏にてその正面楝木の下には波の蛙股があり向拜柱の柱頭は三つ斗にてその斗組の鼻は隅木へ連續せしめて若葉の木鼻がついてをる。虹梁の上 には左右に三つ斗を乘せ拳鼻は龍としその天井は格天井である。