足利期
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第三章武家美術時代
第五節美術工芸
此の時代に於ける美術工藝品の今日に傳はれるものは、主として金属製の古鏡、刀剣、鐔、古鏡、鍔ロ、陶器、古代塗等である。これより古鏡を始め前述のものにつき逐次に基きてその特色と構造を述べて見やう。
一、古鏡
古鏡は鎌倉時代に入り藝術界にては武骨なる特性を表はしたる如きも鏡にありては寧優美、溫雅なる風尙を認むべき時期てあつた。而してその傾向は範を藤原時代に取つたもので別に甚だしい變化がない、卽ちその特色を次に擧ぐる。
足利期
この時代は日本式即ち和式の鏡の革新期である。藤原時代以來行はれた樣式は鎌倉時代まで餘韻を存せしも遂に好尙界の倦怠を來し、當代に至りて愛に新生面を拓くと共に頗る古式の復興を試みた。その運動の結果は即ち當期の特色であつて左の如くである。
1、 この時代の圖様は漢式時代の如く內外兩區各特殊の模様を置いてある。
2、 內外の各區の外に櫛齒紋、鋸齒紋等の帶をつけ又は有節重弧紋、珠紋、珠弧連結紋等の諸圈がある、時としては內區の輪廓、蕖紋を成せるものありて漢式時代の如く鏡背を多くの部分に分てるものがある。
3、 有座鈕及び素鈕以外に龜形の鈕流行し稀には六葉の花形を鈕とせるもある。然して龜形は首を上に向けたるもの多く下に向けたるものは極めて少し。
4、 小鳥は前兩期の如く蝶を伴ふものなく雀となり多くは兩翼を張りて相對し向鳥紋を形成し內區の上部に配せるもの最も多い。
5、 雙雀相對せるもの當期末に至りては一轉して雙鶴となり首を上にせる龜鈕のロ邊に於て嗡を接してをる。即ちニ鶴ー龜を接吻せしむ。6、
飛散模様流行し、花紋散し。菊花、亀甲繼ぎ。松枝、三盛龜甲等を散したるものが多い。又家紋を附せしものも多い。
7、 蓬萊山の圖樣當期の後半より用ゐられ、次の德川期に流行すべき端を發いた。
8、 德川期に至りて殆んど一般の形式となれる柄鏡の我國に於て鋳造せられしも又この期に始まりしものである。
柄鏡の起源は支那にては、遼金兩宋の頃にて我國にては湖州鏡に柄を有したるものを始めに見るに到つてゐる。
又織田信長の頃ょり「天下一」の銘を附し信長は之れを禁せしが德川時代にー般に弘まるに至れり