延光寺本堂
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第四章庶民美術時代
第二節建築
當國は一般に雨量多く暴風雨の襲來烈しい所でぁる關係上古建築の現存せるものは小數である、然れども林業盛にして山地より良材を出し、稻生村其他縣下到る處に良質の石灰を産し漆喰セメントの製造行はれ建築材料豐富なるを以てその建築技術も亦發達してをるから新時代の建築にも優秀なるものが少くない、殊に西洋建築が傳來し官衙、學校、敎會、會社等の建物はこれに支配せらるることとなり材料は煉瓦の外に鐵筋コンクリートを用ゆるに到り建築樣式は和洋折衷など行はれ頗る複雜となつた、次に寺院建築、神社建築、两洋建築につき順次に述べることとせう。
一、寺院建築
この時代の初期に於ては寺院は非常なる致命的打擊を受けた、それは廢寺といふ令である武家時代にありては土佐七伽藍九門寺其他大小千以上もありし七堂伽藍完備せし寺院が一朝にして破壤せらるることとなつた、それは印度に於けるマへラクラ王の大滅法よりも暴逆な制定であつた、それが爲め高塔伽藍悉く破壤せられ優秀なる佛像は散逸し佛畫は紛失し佛敎美術は地を拂ふて衰滅に歸した、そして基督敎建築が之れに代つてゐたが明治廿四五年頃より國粹保存論の聲に伴ひて寺院再興が少しつつ行はれ明治四十年以後漸次復興の機運に向つて現今に及んで次第に復活の傾向がある
延光寺
本堂は明治三十九年三月の改築にて大工は山奈村の織田才次で瓦葺とおなり入母屋造にて南面し六間四面にて千鳥破風を東西に向け南面に唐破風の向拜をつく。向拜の桁行は四間ニ尺梁間ー間五尺である。
楝飾には鬼瓦をつけ側面の千鳥破風には懸魚に龍を彫刻しその內下方に上下に大小ニつの妻虹梁を平行にしニつの妻虹梁の間に大瓶束を建て左右に波を彫刻せる合掌鳍を施して優美である。下方の大なる妻虹梁の下に肘木と斗を施して裝飾してある、本堂四面の九柱の柱頭は斗組があつて三つ斗を上下に重ねたる出組となり大斗の下の台輪の木鼻は波となり意匠を凝してある、本堂三面に橡を
附け高欄を設け擬寶珠柱を立て本堂正面の內側の見附の丸柱の上には象の彫刻がある、正面の向拜の唐破風の部分には鬼板に牡丹を刻しその下に龍虎の彫刻があり、屋根裏は輪垂木にてその下方に龍を彫刻し更にその下部に兎の波渡りの彫刻あり、向拜柱は四本にて柱頭の斗組は出組となり。中央左右の柱頭には唐獅子の優秀なる彫刻があり斗組の上端には鳥の彫刻を施す正面見附の虹梁の上には浪に蛟龍と仙人(乘龍仙人)の彫刻あり左右の虹梁の上には各々唐獅子に牡丹の彫刻を施してある、而して虹梁の助鼻には牡丹を施し虹梁の兩端の拳鼻は見返し龍にて刀法優秀である、而して向拜の兩端の屋根裏の隅には松に鷹の彫刻があり向拜柱と本堂とは海老虹梁にて繫ぎ中央兩側の手挾は松にて內側の手挾は菊である。
