小川村八社河内神社本殿

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第四章庶民美術時代

第二節建築

當國は一般に雨量多く暴風雨の襲來烈しい所でぁる關係上古建築の現存せるものは小數である、然れども林業盛にして山地より良材を出し、稻生村其他縣下到る處に良質の石灰を産し漆喰セメントの製造行はれ建築材料豐富なるを以てその建築技術も亦發達してをるから新時代の建築にも優秀なるものが少くない、殊に西洋建築が傳來し官衙、學校、敎會、會社等の建物はこれに支配せらるることとなり材料は煉瓦の外に鐵筋コンクリートを用ゆるに到り建築樣式は和洋折衷など行はれ頗る複雜となつた、次に寺院建築、神社建築、两洋建築につき順次に述べることとせう。

一、寺院建築

當代に於ける神社建築は寺院建築の如き波瀾はなかつたが只この時代の初期には神佛の分離が行はれ佛刹に使用するものは一切寺院へ引渡し須彌壇は取壤して神躰奉安所を殿内に作つた。寺院は廢佛の爲めに袞へたけれども神社は依然として變化がなかつた、然して當國にては神社の祭禮日に當りて神樂など行ふものは四五社に限られてゐて極めて少いが村落によりては村芝居などを祭日に行ふ爲め拜殿を舊舞台に組立てたものもあつた。この時代の中期には日淸、日露、日獨の三大戰役が行はれ國人が戰勝を祈願する爲めに神社は榮えた、そして戰勝後凱旋の繪馬は全縣下の社殿に揭げられ非常な莊觀を呈するに到つた、この繪馬には優秀なものが少くなく近世の戰爭の悽慘の狀を描寫して遺慽がない、又、燈籠、百度石、鳥居の如きものも戰勝の結果夥しき程多く建てられてゐる寺院もこの戰爭中は榮へたるも當國人は佛道に歸依するものよりも神道によるもの多きを以て戰爭に因緣深き八幡宮の如き武神は最も繁榮したことであつた建築樣式は前時代と大差はない、その最 も莊麗を疑すものは本殿、拜殿を三面入母屋造としたが但し本殿は普通に流れ造が大多數を占めてをる。屋根を葺には枌葺に本殿をするが普通であつたが後には銅板葺が流行することとなつた、ことは保存上からも又美観の点よりも妙案であつた。

小川村八社河内神社

八社川內神社は小川村の西津賀才字大野に鎭座せる鄕社である。峻嶺四境を圍み人烟少き山峽にありて杉の並木が境內を取り圍んで森嚴の氣人に迫るの感がある。祭神は大物主神にして元は八社川內大明神と稱しその緣起は古老の說によれば今を去る七百年の昔に藤原數惠之助といふもの大和國三輪大明神の分靈を身の守護とし此地に落下り祭り始めたるものである。而して此の神の分靈は伊野、上八川、新別淸水。縱の木山等八所に分ち遷し祭りたるにより八社川內大明神と稱すと、然して藤原數惠之助は當衬の樫山部落に若宮神社として祭つてある。此の川內神社の舊き神社記によると往時の社殿は一丈四面にて板葺の建物で宮の林は長さ五十間橫が三十間で藩の御山方の支配に屬してゐたとの事である。神体は黃金の神像にて身長一寸八分のものであつたが盜難にて紛失してない。明治元辰三月改稱の逹によりて八社川內神社と改稱し五年鄕社に列した、社殿は大正十五年より百七十六年以前寬延元年の大暴風に境內の古杉と共に倒壤せしを改築し然して後寬政九丁已年山內豐策公の時代に改築し現存のものは明治六年酉九月廿三日に造營せしもので本殿の向拜の正面見附の虹梁と左右の向拜柱と本殿を繫げる海老虹梁は寬政元年再興時代のものを其儘にて取付けてある。

拝殿

社殿は東面し拜殿は瓦葺入母屋造の本破風にて正面の上部に雲の懸魚あり桁行ニ間半梁間四間にて四面には柱頭に斗組もない蛙股もない。向拜は桁行ー間四尺奥行四尺にて柱頭には斗組がー手先にて繪樣肘木があり虹梁の上には唐草模様を刻しその上に若葉蛙股があつて三柏葉の絞がある。虹梁の拳鼻は雲形に刳つてある。

吉野村若一王子宮

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