土陽美術會諸作家
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第四章庶民美術時代
第三節繪畫と書道
當代に於ける繪畫は從來の日本畫の外に洋畫勃興して空前の發達をなした、然して日本畫は南畫派北畫派、浮世繪派、四條派の數派に分れたるが當國にては南畫の勢カ最も大にして土陽美術展覽會
に出品せられたる日本畫の大多数は此の畫派であつてその代表的作家に山岡米華を出し日本的の盛 名を馳せてゐる。北畫は當代の初期に於て行はれ宮田洞雪、弘瀨竹友齋がこれをょくし浮世繪派は
山本昇雲が之を代表し四條派は柳本素石が之をよくしてゐる。洋畫はアカデミー派を國澤新九郡が 明治五年英國偷敦に留學してニヶ年間修業して歸朝し東京麴町區平川町に彰枝堂を開きて之を授け
クラシック派は石川寅治が上京して小山正太郞の不同社に學んで出藍の譽を擧げ印象派は山脇信德 が我國に於ける先鞭を附けその闘將として榮冠を獲得してゐる。かくして各流各々その據る所と守
を處を異にし研を競ひ技を凝して百花繚亂の有樣であつたが大正年間に入りては更に一般美術界の 大勢に從つて日本畫と洋畫と漸次接近し日本畫は院展風の作家出で洋畫には現代佛蘭西畫家の作風
の影響を受くること頗る多きを加ふるに到つた。次に日本畫及び洋畫の作家につき列傳的に紹介することとしやう。
一、日本畫と作家
明治初年前後にありて南畫家として名ありしものは橋本小霞、德弘董齋である
土陽美術會諸作家
次に土佐唯一の美術團体にて過去三十餘年の歴史を有せる土陽美術會につき縣內にあるも のにつきて槪略を記するとその中堅作家は頗る多いがその中にて日本畫の幹事は左の三人である。川野棹舟名は孝敏、明治ニ年十一月生る、宮田洞雪につき狩野派を學び菊地芳文に師事し寫生派を研究し美人及花鳥に趣味を有す、明治卅ニ年以後は他府縣展覽會に全く出品せず只管土陽美術曾に出品して予と共に幹事となり其事業の發展に貢献するをに努めつつある高知市在住の作家である、
沖野一秋は慶應三年十月高知縣香美郡楠目衬に生る、幼にして宮田洞雪に師事し狩野泥を修め風俗人物を得意とす土陽新聞の揷繪を描くこと前後十八年後年退社して丹靑に親み予と共に土陽美術會の幹事となり同會に出品して他の會に出品せず專ら土陽美術會の發展に努カしつつある高知市在住の知名の畫家である、
小松應春は香美郡夜須衬の人、十六歲の時醫學に志して大阪に出しも四條派の大家高谷篁圃につき畫を學び後京都に出で谷ロ香喬に師事し門外生となる後年鄕里に歸り土陽美術會の發展に努カし幹事となり鄕土美術の爲に盡瘁しつつある前途ある作家である。次に土陽美術會の新進作家は頗る多
數であるが其中にて主なる日本畫家は岩井王山(南畫)渡邊千春(南畫)寺田米陽（米華門人)若尾葭厓（南畫)竹內楓橋(同上)中內東秀(東畝門人)澤田東耕(東畝門人)谷脇素文(素石門人)野衬春江(素石門人)小南香堂、岡衬景雄、下元天涯、福留秋涯、久保芳翠.吉川素竹、上島素水、足達季彥、奴田原松嶺、吉永梅里、濱ロ松堂、中岡華堂、吉村松南、後藤光城、足達石泉等ありて多士濟々たり、會員外にありては南部茂(束京美術學校卒業)前田千寸(同)山崎勇馬(同)石田吉次(同)國則薰(同)宮地秋人、平高正三等の前途多望の作家があり。更に又履歷に異彩ある作家に中島石南がある、名は繁龜といひ高岡郡新居衬に明治十三年十二月を以て生る、高知縣立第一中學校より進んで京都大學に入り理學士となり同大學講師たり、その助敎授たらんとせし榮職を抛って南畫の研究に沒頭し水田竹圃の門に入り刻苦研鑽技大に進み南畫院展覽會に入選すること數回にて將來有望の作家である。又幡多郡下田村出身の中島茱衬は小灣の血統を承け京都繪畫專門學校を卒業し國展、院展に入選し將來を囑望せられてゐる。又小川窓月は香魚の圖の名手で女流にては赤岡町出身にて伊藤錦圍あり、島成園の門人にて帝展に入選し盛名を馳せてゐる。
