日本海々戦敵前大回頭
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日露戦役
敵艦現はる
露国の旅順艦隊は、曩に全滅したる以来、窃かに戦闘準備に汲々とし、其の太平洋第二艦隊たるバルチック艦隊は、六ヶ月を要し、ネボカトフの第三艦隊と合して新嘉坡沖を通過しカムラン湾ホンコーへに假泊の後、第二、第三、の兩艦隊の主力は、北進の途に上つたのであつた。斬くと知りたる我が東郷艦隊は、潜に彼の行動に深き注意を拂ひつつあつたが、果せるかな敵艦隊の一部は、五月二十五日午後二時半、上海附近に現はれた。而して八艘より成る露國運送船は呉淞沖に顯はれ、是と同時に軍艦二隻は東方に去り、爾餘の艦船は呉淞に入港し、其主力は北航しつつあつた。果然敵は第二艦隊第三艦隊と合して其數約四十隻威風堂々として五月二十七日午前五時突如我が對馬沖に顯はれた。而して我連合艦隊は、豫じめ作戦を講じ、各根據地に潜みて俟ちつつあつたが、哨艦信濃丸より「敵艦現はる」との急報に接し、直ちに出動、各艦隊には海戦の命が下り戦闘旗は翩翻として旗艦三笠の檣頭高々と掲げられた。