單肉砲身と複肉砲身
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瓦斯の最大壓カが平方糎三千 四百瓧に達するものがある)抗 堪し得るため、彈性が大で然か も適當に硬く、且つ抗カが大なるものを必要とする。之等の耍
求に近い材料は「ニッケル」や「クロム」等を混和してる特種の鋼鐵である。現今多く用ひら れるのは「ニッケル」を含んだ「ニッケル」鋼又は「ニッケル」と「クロム」を含んでゐる「ニッケルクロム」鋼等である。單肉砲身と複肉砲身砲身には單肉のものと複肉のものとある。砲身は瓦斯壓力の作用を受けた時一時擴大するが作用が止んだ時原形に復さなくては役にたたない。砲身が內面
からの壓カに依つて擄大する際には、內表面の延伸は外表面の延伸ょり割合が大である。從つて或限界までは肉厚を增すことによつて、抗堪力を增すことが出來限界以上になると外面は何でもなくて内面が破壊するから、
肉厚の增加は效果がない。卽ち單肉の砲身は高い瓦斯壓力に杭堪し得ないのである。從つて單肉砲身は山砲、步兵砲、迫撃砲等の瓦斯壓カの低い火砲に使用せらるるに過ぎない。複肉砲身は一本の砲身の外側から、箍をはめて締め付けたものである。此のやうにすると外側を少し締めても、內面は多く壓縮されて居る故、火藥瓦斯の壓力を受けた時內面は壓縮された量が原形に復する迄は少しも影響なく、原形以上に擴大される場合にのみ延が起る。この場合箍はニ重に延伸を受ける事になるけれども、中徑が大であるから、砲身內面に比較するとその受ける壓カは著しく小である。從て斯の如き構造とすれば、肉厚は同じでも單肉砲身に比較して大なる壓力に抗堪し得るものである。大口徑火砲ではこの箍を二重三重に嵌装したものがある。又之と同じ理にょり箍を裝する代りに、一定の緊張を有する扁平な鋼線を數十列緊捲したものがある(鋼綫砲身と云.ふ)。單肉砲身では常用ニ千瓧以上の瓦斯壓力に抗堪せしむることは困難である。複肉砲身ではニ千七八百瓧位までは抗堪し得る。然るに近世の火砲は益々其威力の增大が要求せられるため、大なる初速を必要とする結果、高い瓦斯壓力に抗堪し得る砲身を必要とするやうになつた。この要求に應じて現はれたものに自己緊搾砲身がある。この砲身は外形は單肉砲身と同一であるが、その製作に當り腔面に五六千瓩以上の水壓を加へ、極微少量の永久變形を起さしめたものである。かくの如くすると金質の彈性限界を向上し得るのと同時に外層が順次内層に對して緊め付けるやうな働きをするやうになり、恰度無数層の箍を嵌装したのと同じ効果がある。従って抗堪力は非常に増大するものであつて、加へる水壓の程度によつては、四千瓩附近迄達せしめることが出来る。