榴彈砲
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これまで述べたものは大抵が加農であるが、この外に榴彈砲がある。加農を直球に譬へれば榴彈砲はライナ性のフライに相當するものであつて、加農に較べて弾道が彎曲してゐる計りでなく、彈丸の速度もおそく、初速は200乃至600メートル位が普通である。曲射弾道の利用のできるのは榴彈砲の特長で、山の蔭とか谷間のやうな軍艦から砲撃されないやうなところから、山越に敵を砲撃することができる。故に砲塔や隠顯砲架のやうに複雑な防禦設備の必要もなく、構造も非常に簡単にすることができる。しかも大射角を附與することができるのみならず、射距離に應じて装藥量を加減することができるので、非常な近距離から遠距離まで自由に弾道を導き、大なる垂直威力を發揮して、艦船の最も弱點であるデッキから内部を貫いて撃沈せしめることができる。以前の海岸砲は主に砲架の重量を利用して、後坐のエネルギーを吸収させたり複坐させたりしてゐたので、重量も重く發射速度も小であつたが、現在では精功な駐退機や空氣復坐機等ができて、輕量で威力の大きなものが作られるやうになり、必要の場合には攻城砲としても使用できるやうになつたものがある。