将来のロケット
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大砲は砲身内において火薬瓦斯の仕事を弾丸に與へるだけで、その後は空気抗力を受け、速度は次第に減ぜられるけれども、ロケットは自身の噴出瓦斯に依って速度を得るもので、燃料としては、火薬またはこれに類似のもの即ち、黒色藥ニトロセルローズ、火薬、アルコールと液體酸素、ベンゾールと液體酸素等を用ひるやうである。これ等を自體に持つてゐる謂はば動力は、自給自足であるから、生成瓦斯の噴射しつつある限り、速度を増すことができる理である。それ故著大の速度を得んとするとき、遠大なる距離に到達せんとするとき自動車、飛行機、弾丸等に利用されるのである。そこで前にも述べた星や月へ達するとか、大海原を越えて射撃するといふやうなことは急にはできなくとも、長射砲の代用位になることの近き将来なるべきは、確であらうと思はれる。かうした研究はその初においてとかく狂気の沙汰とされ勝で、研究者を狂人として取扱つた例は、尠くない。現に獨逸のガンスウイントは、ロケットを研究し、宇宙船の計画を建て、狂人視され、不遇に陷つてしまつたと聞いてゐる。今日飛行機で、空中を自由自在に飛び廻るのを誰が不思議と思ふであらう。しかしその昔において空中を飛ぶ研究をしてゐるのを見た者は、發狂の結果だ位にしか思はなかつたに相違ない。ロケットの成功を遠い國の夢と嘲る事は餘りに輕卒であらう。兵器には昔からその時代時代における最近科學の粹が取り入れられてゐる。歴史に徴してロケットは先づ兵器への應用を目標として發達するのではないかと想像されるのである。