以下装甲自動車が、その任務に應じて如何なる條件によつて作られてゐるかに就いて述べよう。
一、 強行偵察(又は強襲)用装甲自動車 敵と近く對峙してゐる如き場合には、敵彈をくぐって行ふ強行偵察または威力偵察を必要とする場合が多い。斯る時装甲自動車は非常に重寶に使用される。この種のものは路上を輕快に運動し得るのみならず、路外の行動能力の十分なるを要する。殊に狭い路に於いて迅速に方向變換または逆行し得ることを必要條件とする。武装は通常機関銃である。
二、 騎兵支援用装甲自動車 騎兵は通常主力部隊を遠く離れて捜索をし、また戦線外翼の掩護をなすものであるが、これに装甲自動車を配属してその威力を増大することは、軍機械化の重大な一方面で、欧米各國に於いて早くより着目せられてゐる。この種の装甲自動車の路外運動性は、騎兵に比適するものでなくてはならぬのみならず、路上に於ける運動性は十分快速で、騎兵部隊より更に挺進して遠く行動し得るを要する。武装は機関銃は勿論敵の装甲自動車などと遭遇した場合、これを撃破するため平射砲もしくは機関砲等を持たねばならぬ。一方騎兵集團の強敵たる敵航空機の襲撃に對し、これを駆逐するため高射機関銃砲の装備を必要とする。
三、 戦車駆逐用装甲自動車 敵戦車に對する防御のためには、歩砲兵に於いて對戦車砲を持ってゐるが、装甲自動車にこの種砲を装備して置いて、自らは快速で敵弾を潜りつつ戦車を駆逐するのは非常に有効である。この目的のための装甲自動車は、戦車に劣らぬ路外通過能力と必要なる對戦車砲を装備する。
四、 水陸兩用装甲自動車 上陸作戦や敵前渡河のため、上陸のみならず自ら水上に泛び、モーター・ボートと早變りして活動し得るものも出来てゐるが、詳細はその他のことと共に特殊自動車の項に譲る。
五、 運搬用装甲自動車 弾丸雨下の地域に於ける人員、武器、弾薬等の運搬は、極めて困難とするところである。この場合自ら積みまたは他の車に載せてこれを牽引して、この重大任務に服する装甲自動車が必要である。この場合武器は省略することも屡々で、速度も速いことが望ましいが、戦場に於ける弾痕地帯等通過のため、路外の運動能力あるものを要求せられる。
六、 通信連絡用装甲自動車 捜索の結果の報告命令の傳達、部隊の指揮連絡用としては自ら快速をもつて傳令となり、または無線通信機材を持ってゐて、これで連絡する装甲自動車を必要とする。この任務に服するは通常小型のものである。
七、 装甲サイドカー 快速を利用し通常連絡偵察等の任に服するもので、サイドカーに簡単に装甲を施し、時には輕機関銃位を取付ける。以上のやうに装甲自動車は、その任務によつて各種各様の様式のものを必要とするが、世界各国共その國軍の装備に方つては、出来るだけ彼此相譲って、その種類を成るべく少くし、各種目的を達成し得ることに腐心してゐる。