抛射用火薬の働き
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火薬の初めから現在まで
小銃機関銃火砲は總て火藥の発達によつて進歩して来たものであつて、現今ではまだ火薬萬能であるといつてもよい。近来火薬の力を借らずに弾丸を発射しようとする考案、例へば空気砲、電気砲、遠心銃(遠心力を利用して弾丸を発射するもの)等があるが、誰も知る空気銃の外は、実用されてゐるのを聞かない。次に火薬が銃身或は砲身内で燃焼すす際、どんな状態を呈するか、極めて簡単に示せば図のやうな風になる。結局弾底に働く仕事は、A或はBの曲線で囲まれた部分の面積である。曲線の變り方にはAの如きものとBの如きものとあり、前者は緩焼火薬、後者は急焼火薬と稱するものの壓力生起の状態を示してゐる。急焼火薬では山の高さが大で、砲身はこの壓力に耐へるだけ強いものでなければならず、同一金質であれば厚さを増す必要を生じ、従って重さを増す不利を免れない。緩焼のものは山は低いが、砲口端においてまだかなり沢山の力を持っているので、これを放出するのは損失であるばかりでなく、砲口端における弾丸の速さ即ち初速を不齊ならしむる不利を伴ふから、何れにするもその程度がある。それでは極端に考えて、大気壓と平衝するまで砲身を伸せば、火薬の力の全部を利用し得るではないかといふ疑問があるかも知れないが、かくすることは砲身が過長になり、利は害を償ふことができないのである。以上の次第で、火器の目的に添ふ如く或は急焼或は緩焼のものと、適当の条件を採用するのである。かくして現在確なところ、初速九百米位から以下任意のものを得、また百六、七十瓩の弾丸を、五十粁以上の遠距離に著達せしむることができるのである。これ等は一見なすところなきが如き火薬の働に、負ふところが決して少くないのである。