毒瓦斯防護の教育
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毒瓦斯の防護法
毒瓦斯防護の根底は、先づ有毒瓦斯の認識即ち検知である。即ち成し得る限り迅速に、敵の使用せんとする、また使用したる瓦斯の種類を知ることが必要である。これには平時よりの偵知と、各種の化学的処理法とに依って、判定するのであるが、それは暫く置き、各國が如何にして國民にこの教育をなしつつあるかを紹介しよう。即ち獨國の如きは、教育用瓦斯嗅覚検知用燐寸を創造し、これに化学薬品を浸漬して、民衆をして瓦斯の臭気及び刺戟に慣れしめ、これに依って受けたる印象を、永く脳裡に記憶せしめるやうに努めてゐる。この反応は眼並に上部呼吸器官及び肺にさへ明瞭に現はれ、しかも人體には危険がないとのことである。如斯家庭團欒中にも、化学兵器の認識練習をなすが如き、獨人の周到なる準備には驚愕の外はない。次に積極的の防護法は、速に敵の企圖を察知し、これが出鼻を砕くのであるが、それは暫く置き、消極的防護法は、これを各個防護と、集團防護とに分つて考へることができる。各個防護とは、各個の中毒を防止すべき手段をいひ、防毒面、防毒衣、獨立式呼吸器の使用のやうなものがこれである。集團防護とは、個人でなく集團のため、或は地上の一定範囲における防衛法をいふので、軍隊の防衛、汚毒地の消毒、または地下構設物の防衛消毒等は、これに屬するのである。瓦斯防護の要は各個防護と集團防護との彼此適用に依って、の目的を達成せられるもので、如何なる集團防護のみをなすも絶對に確實なる防護は得られないのである。故に各人は先づ第一に専ら各個防護に依らなければならぬ。集團防護は單に各個防護の補助と心得べきである。