電波作用の怪力線
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電氣的威力兵器
電波は金属に電流を誘發する性質がある。電流を生ずると熱を生じ、時には火花を發生する。従来飛行船が原因不明の爆発を起こしたことは、屡々耳にする事であるが、之は「ヂユロキエ」氏や「ル・ロア」氏の實驗に依れば、飛行船の金属部に細裂を生じ、そこに電波による火花を發して爆發を起こしたものであるといはれてゐる。また電波が交叉する場合には、時として強力なる作用を呈することがある。将来電波は益々輻輳すべきであるから、飛行船や火薬庫其他燃焼し易き物體の集積には、特別の注意を要する次第である。飛行機や自動車には一般に點火用の電気装置を備へてゐる。之に電流を誘發して勝手に火花を發すると、機関は故障を起して運轉を中止するに至る。かくの如く電波を以て、或作用を及ぼすことは理論上決して不合理なものではない。此事は現在の科学では何も珍しい作用ではないが、怪力線として軍用に供せんとする點に於て興味の湧く問題である。只實際問題としては有効距離が如何にも少い。第一波長を目的物に應じて調整せねばならぬ。目的物の電気配置が送波方向と一定の方位にないと効果が少ない。近時電波の指向性を有するため「ビーム」式が發達して、餘程有効となつたわけであるが、一般に電力の消費量に應じて割合に能率が悪い欠陥が某國では怪力線防護のため、飛行機用の「マグネット」を金属板で覆ふたといふ話がある。