驚異すべきその進歩

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戦場に於ける戦闘力の主要因子である打撃力は、各種銃砲弾薬類の威力に俟つのであって、かくの如き飛び道具を以て戦闘する事を火力戰といい、その道具のことを広い意味で火力戰兵器というのである。近代の戦いは科学の力によるものであるということは、よく聞かれることと思うが、化学の力と言う事を、理化学的の事項のみと考えず、広い意味で頭の科学の力をも含むものと考えたいのである。そもそも昔は火縄鉄砲を撃ったり、或いは重い口込め砲を以て「ボールダマ」を撃って戦をしていたのであるが、これでは戦に勝つことが十分でない。そこで元込めの速射銃砲とか、煙の少ない且つ少量で爆発力の強い火薬とか、頭の尖った細長い弾丸などを造ったりすることを、人間の頭の力で科学的に考え出したのが、爾来時勢の発達は実に著しく、又戦の要求は益々進み、各種の用途に適合する大小各様の銃砲弾薬類を必要とし、且つ種々と偉大なる条件を備える力強い兵器でなければならないようになって、いわゆる頭の科学が進んできた。これは又物質科学の非常なる発達に起因したことはいうまでもないが、因果関係からいうと、人間の科学的能力が偉大なる物質科学を生み出し、これを兵器に適用し、その進歩を促したる頭の科学の力とかくの如き兵器を有効に活用する将兵の優れたる精神が、近代兵器の驚異を産出したものと信ずる。