藤原期

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土佐の古鏡

藤原期の前期奈良時代には葡萄鏡及唐鏡の輸入ありて正倉院に藏せられその製造に於ては花鏡、方鏡、鐵鏡等を作らしめしことや、その下繪等も殘つてゐるが何れも唐鏡なりしこと前述の如くである。藤原時代となり彼我の交通疎となりて我國固有の獨創的形式を始め製作薄手どなり緣は高まり紐は菊花形となり、紋樣は叢生せる草花に流水を配し、上部に二羽の小禽鵲を飛ばしめ或は松喰鶴 唐草、紋樣などを記してある。この時期には作鏡の技進步して優秀なるものを出し宋鏡を凌ぐやうになつた。而して藤原期の特色を列記すると、

1、この時代の鏡面は殆んど水平である。

2、鏡背は單線によりて內外區に分てるものと、何等の區劃なきものとある、而して內外區の區劃あるものは菱花鏡及び特に形の大なる鏡を除きて緣比較的に狹くして高く、兩區の區劃なきものは緣低くして稍廣く、その面蒲鋅形なるを常とする。

3、鈕は小にして低く、花形の座を有せるものとこれなきものとある。花形座は捩れ菊狀を成せるもの最多く蓮華の如き座を有するものあり、而して素鈕は內外區の別なく緣低く蒲鉾形を成せるものに多い。

4、鏡背の模樣は菱花鏡、菱花鏡及び少數の圓鏡は唐式の餘勢を保ちて均勢的なる所謂唐花唐草模樣を表はせども、當期に屬せる多くの圓鏡及び方鏡は槪ね花鳥の類を寫出し單純なるは二三の蝶鳥を表はし複雑なるは水や草やを現はし裝飾的ょりも一面の繪として見るに足るもの多し而して花木の布置は內圓を稍等しく二三に分ちて殆んど均勢的圖様を示してゐるものと、只一 方より見るべく或種の比例を以て草木に添ふるに蝶鳥の類を以てせるものとあり、而してこの 一方より見るべき圖様中最普通なるは、向つて右の下方より生出でたる草木が鈕を半ば繞りて その枝葉左方の上部に至り、その下にー雙の鳥を配せるものにして、この期の後半より鎌倉期に至りて益々流行せしものの如し、この圖様の反對に草木の向つて左の下より右に曲折し、その下に鳥を配せるなどの鏡は極めて少數である。これは時代の約束にして模様史上看過すベか らざる事頃である。

5、この期末葉には湖州鏡と稱する一種の支那輸入の鏡の外に前代以前の如く銘文の鋳出せられたものはない

古鏡

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