湛慶作雪渓寺善賦師童子像

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第三章武家美術時代

第三節彫刻

木造善腻師童子立像(吾川郡長濱村雪蹊寺)は毘沙門天の脇侍佛として湛慶作の銘を有するものにして明治四十四年四月國寶甲種三等と指定せられしもの高さニ尺三寸五分ある。久しき年月の間に兩手は欠失して何いのは惜しいが吉祥天女の像と共通に深みと丸みを持つてゐる。童子が斜に上方に瞳を開きて仰ぎ見たる刹那の頭の格好、前額、頰やロ、あごの表現は批評の佘地のない出來榮であつて後世木彫の模範としての價値を備へてをる。用材は檜材にて手法は鎌倉式木割法にて佛身の作り方は兩脇を縱に矧ぎ兩袖を割りて刻み、頭部は頸にて胴に接合し面部は左右に割りて玉眼を嵌入し兩足は足首にて差込みてある、全体が內刳となつてをる、更に外觀を具体的に記せば頭髮は左右に分け揚卷とし右手を屈臂し胸に當て左手も屈臂して腹に當て、足には靴を穿つてをる。臺座は岩座の上に荷葉を置き框座にて周圍黑漆塗にて角金物及び散金物を附してある。永き年月の間にこの佛像も揚卷は紛失し、首の柄、胴の矧目左右縱に兩手が手首より紛失し持物もなく台座荷葉もなかりしが大正七年の修理に當りては手は欠失のままとし其の他は總て矧目を緊結して修理したものである。