北原村谷地法華寺仁王像

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第三章武家美術時代

第三節彫刻

谷地法華寺(高岡郡北原村)の仁王像は運慶作と傳へられ當國にて著名なる立像でめる。弗身の高さ約六尺六寸、榛の木を以て作りたるを以て榛木仁王として知らる、仁王堂は明治七年の改築にて左右にニ体安置してある、阿方(那羅延堅固は)六尺六寸の高さにて寳髮を結ひ木眼にてロを開き齒を顯はし右手に獨鈷を持ちて振り擧げ左手を抱して掌を握りたる姿勢にて全身を朱にて塗り纒衣は黑く塗つてある。佛身の全体に刳目があり鎚にて所々を締めてあつて鎌倉時代の作風の特色を有する、この彫刻は頭部の彫法が最もよく骨格も筋肉も充分に表現せられてゐる。全身の割合も整ひ腕の部分も遺慽なく現はされてゐるが腰部より下方の彫刻は未完成となつてゐるこれは見えざる所なる故であらう。作風全体は剛健素朴であるが纏衣が特に硬澀にして脛骨が短く大腿部があまり大に過ぎ膝關節の部分の表現は古拙であって跗骨、躔骨、趾骨の部分が小にして釣合がとれぬ、手指は何れも五本が同大同形にて稍々單純に過ぎるのは未製の爲めであらう。吽方(密遮金剛)は阿方よりも遙に優秀の作である、佛身の高さ六尺四寸にて木眼となり寶髮を結びロをへの字形に結び顔面の彫法も巧妙で右手の表現は寫實的に頗るよく出來てゐる。全体を朱にて塗り纏衣を黑く塗つてあつて刀法は素朴鈍重である。この佛身も腰より下方が未完成の傾きがある。例へば大腿部が大層大に過ぎ脛骨が短く足部に當る跗骨、蹠骨、趾骨の部分が小に過ぎ左手の手指も同大同形にて變化に乏しく寫實を離れてゐるのは未成の爲めであろう、果して運慶の作なりやそれは後考を俟つこととするが然し將來國寶に列するの價値を有してゐる。

彫刻

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